今までも様々な経験をされてきた斉藤さんだが「今が一番苦労しています」と話す。渋谷の再開発に伴い東横店は2013年の東館営業終了を皮切りに、今年の3月に上層階営業終了、そして9月13日をもって全館営業終了となった。「東館閉館の際は夜中にトラックを約15台程停め、フロアごとに什器備品を順次出して廃棄物業者のトラックに乗せて…の作業を繰り返し行っていました。今年は駅周辺が再開発工事中のため、トラックを一気に停めることはできず、4月からの半年間ほぼ一日おきにトラックを手配して少しずつ什器備品の廃棄を行いました。建物の営業を終了するということは本当に大変だと痛感しましたが、とても良い経験、自信に繋がりました」と話す顔は達成感に満ちていた。また、「一昨年の渋谷消防署が主催する自衛消防訓練審査会女子の部で、東急東横店の自衛消防隊が優勝したことが今までで一番嬉しかったです」と教え子たちの健闘を称えた。審査会には男子隊、女子隊、警備隊の部があり、渋谷区内の約50の事業所が参加する。東急東横店では、毎年新入社員が数か月間、ホースや消火器を持っての猛練習を重ね、審査会に挑む。なかなか結果が報われない、かなり難しい賞と言える。「優勝のご褒美に翌年の東京消防庁出初式のパレードにも招かれ、とても貴重な経験をすることができました。30年目にしてやっとトロフィーに社名を刻むことができ、感慨もひとしおです」と笑顔で語ってくれた。
毎月行う消防訓練では、いくら細心の注意を払っていても失敗は起こってしまう。繰り返し繰り返し行い、失敗は次に活かす。継続することが何より大切だということを斉藤さんは熱く語ってくれた。東横店で培われた防災訓練のノウハウや経験を今後の業務に活かしていく。
85年の歴史が詰まった東急東横店で最後の防災訓練の様子